本日は最近ニュースでも少しずつ話題に上がってきた、「ペロブスカイト太陽電池」について紹介します。ノーベル賞を受賞するかも?!とも言われていましたね!
1. ペロブスカイト太陽電池の登場
太陽の光エネルギーを直接電気に変換する太陽電池。その種類は、原料として使われる半導体によって様々ですが、現在量産されている太陽電池の多くは、「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」と呼ばれるタイプのものです。これらの太陽電池は壊れにくく、高変換効率(高いものでは25%を達成)である一方で、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがありました。さらに、シリコン系太陽電池ではシリコンが厚く、曲げることができないことが設置場所を制限していました。
ペロブスカイト型太陽電池の開発|環境エネルギー|事業成果|国立研究開発法人 科学技術振興機構 (jst.go.jp)
桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明したペロブスカイト太陽電池は、ノーベル賞にも名が挙がるほどの注目を浴びています。この技術は、従来のシリコン型太陽電池とは一線を画し、その特徴から多岐にわたる用途での利用が期待されています。
「完全国産化」も実現可能! 日本発「ペロブスカイト太陽電池」のココがすごい!! – IT・科学 – ニュース|週プレNEWS (shueisha.co.jp)
2. 画期的な特徴と利用シーン
ペロブスカイト太陽電池は、薄く、軽量で、しかも曲げることが可能です。また、印刷技術を用いて製造が可能で、弱い光でも発電が可能な点が特徴です。これらの特徴を活かし、スマートフォンの充電やリモコン、コントローラーの電源供給、さらには衣類に取り付けて移動中も発電が可能となります。
・薄くて、軽く、曲げられる
・塗って乾かす印刷技術で作製できる
⇒印刷プロセスによって大量生産することが可能で、特にスクリーン印刷技術が利用されています。スクリーン印刷により、ペロブスカイトフィルムは高速で印刷され、太陽電池は効率的に製造されます。
・弱い光(曇天、雨天、屋内)でも発電できる
⇒ペロブスカイト太陽電池は低光強度下でも良好な性能を示し、室内の低電力アプリケーションに適しています。実験結果によれば、ペロブスカイト太陽電池は1000ルクスで最大98.79μW/cm^2の出力を達成することができます。
Performances of perovskite solar cells at low-intensity light irradiation – ScienceDirect
また、異なるバンドギャップを持つペロブスカイト吸収体の性能が広範囲の光強度に対して比較され、模擬環境光下で広いバンドギャップデバイスは30.4%の電力変換効率を達成しました。
Performances of perovskite solar cells at low-intensity light irradiation – ScienceDirect
・原料の多くが国内で調達可能
⇒ペロブスカイト太陽電池の主原料となるヨウ素(ヨード)は、世界の年間産出量約3万4000トンのうち、約30%を日本で産出しています。埋蔵量に関しても、日本は世界の3分の2を占めているといわれます。地下資源に乏しいといわれる日本において、ペロブスカイト太陽電池は「大量生産」「低コスト」を実現できる可能性があります。
原料で日本有利、「ペロブスカイト太陽電池」で注目の7銘柄|会社四季報オンライン (toyokeizai.net)
3. 効率の進化
2009年に約3%であったペロブスカイト太陽電池の効率は、現在25%以上に急増しています。一部の研究では、変換効率が25.8%を超えていることが示されています。
https://techxplore.com/news/2023-10-highly-metal-halide-perovskite-solar.html
4. 低コストでの製造
ペロブスカイト太陽電池は、低コストかつ高効率で、シリコンよりも手軽に製造できる利点があります。これにより、今後の太陽電池市場での採用が期待されています。
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2022/se/d1se01045j
5. 現在の課題と今後の展望
ペロブスカイト太陽電池は、効率は高いものの、安定性が他の主要な光電変換技術に比べて劣っています。湿気や酸素、光、熱、または電圧の影響を受けると分解する可能性があります。しかし、これらの課題に対する研究が進行中であり、ペロブスカイト太陽電池技術の商業的成功に向けて多くの努力が続けられています。